東京高等裁判所 昭和62年(ネ)1725号 判決
控訴人は、徴収法二二条三項は、税務署長は質権又は抵当権を代位実行できる地位にあるとし、同条五項はこの地位に基づいて、交付要求ができる旨を規定しているのであって、同項の交付要求権者は、民事執行法八七条一項二号ではなく同条一項四号により配当を受ける者に該当するとも主張するが、徴収法二二条三項は、国に対して、抵当権者が自ら抵当権を実行しない場合に備えてこれに代位して競売の申立てをする権限を与えたというだけの規定であって、このことから、配当手続において国が抵当権者と同じ地位に立つものと推論することはできない。そもそも、民事執行法八七条一項四号所定の担保権者は、執行記録上その権利者であることが明らかであり、当然に配当を受け得る地位にある者とされるから、配当要求をしなくても配当にあずかることができる。したがって、配当要求の終期の制約を受けるかどうかはそもそも問題とならない。これに対し、国税債権は本来滞納者の総財産から徴収を受ける債権であって当然には配当を受ける地位を有するものではない(国税の優先徴収権は弁済を優先的に受けることに関する。)。ところで、徴収法二二条五項の交付要求は、同条一項所定の不動産譲渡がなされたとき、国税徴収を譲渡前の滞納者の財産からでなく、担保権者の受ける配当金からなし得ることを定めたものであるが、この場合でも交付要求自体は明文上必要とされているのであるから、それがないかぎり配当を受けることはできず、この意味合いにおいて、国税債権の配当手続上の地位自体は徴収法八二条の交付要求一般の場合と何ら異なるところはない。同法二二条五項の交付要求が配当要求を要しないで配当にあずかる担保権者の受ける配当金内から徴収されるものであることは右の理を左右するものではない。けだし、民事執行法八七条一項二号と四号とで配当要求の要否を異にする所以は、執行債権等同項各号所定の権利者の地位の区別によるものであるから、もともと交付要求を要するとされ、当然には配当を受け得ない国税債権が徴収の対象を異にすることをもって右の区別を左右することになるものではないからである。以上を要するに、徴収法二二条五項と同法八二条一項のそれとで、交付要求の趣旨において控訴人主張のように異なるものがあっても、右のいずれによるかにより、国税債権自体の配当手続上の地位に変更を来すものではない。それゆえ、以上の見地からしても、右二二条五項の交付要求の場合も、配当要求の終期の制約を受けるものといわなければならない。
(武藤 菅本 秋山)